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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン 池村 千秋

プレジデント社 2012-07-28
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未来の働き方がどうかわるか、いくつかのモデルを出して、読者にイメージさせ変貌や準備を促す。少しSFちっくなところは否めないが、ピーター・ドラッカーの言葉にもあるとおり、今後はますます個の重要性が増すのは確かだろう(労働集約型の時代は協調性が生産性に影響を与えたのに対し、知的労働型では個々が何ができるか、その個々がどう結びつくかが生産性やイノベーションに影響する)。

本書ではその解として、得意な分野を複数極めていく連続スペシャリストになること、そうした人達とグローバルな人的ネットワークを形成することをあげる。ピラミッド階層の組織がフラット化する未来において、知識もますますWebで調べられる中、中途半端な技能やゼネラリストは要をなさなくなるというのは、頷ける。

一方、本書ではスペシャリストのキーとして、1万時間の習熟期間を述べているが(引用はないが、マルコム・グラッドウェル氏の「天才! 成功する人々の法則」が基だろう)、最近ではそれに疑問も出ている。

ハンブリック氏のチームは、エリクソン氏による音楽とチェスの名人の事例研究を見直してみた。そして、こ れまでの意図的な練習(演奏や競技ではないという意味)の時間を被験者たちに質問し、成功の要因のうち練習 が占める割合は音楽で30%、チェスで34%にすぎないという結論に達した。

 また、練習時間にも大きなばらつきがあった。チェスのグランドマスターたちの平均は約1万530時間だった が、832時間から2万4284時間まで幅があった。音楽家も1万~3万時間にまたがっていた。

 これだけばらつきがあれば、1万時間の法則は意味を失ってしまうと、ハンブリック氏は指摘している。

ナショナルジオグラフィック ニュース 揺らぐ“1万時間の法則”


最も、個々が考え備えなければならないのだから、本書は単にきっかけを提供してくれているに過ぎない。この本を読んでその通りにする程度の意識であれば、厳しい未来になるのも事実だろう。
自分のアタマで考えよう自分のアタマで考えよう
ちきりん 良知高行

ダイヤモンド社 2011-10-27
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コンピュータが登場してから、記憶の重要性は低下した(最も、これは文字が発明されたとき、活版印刷が発明されたときにも言われていることではあるが)。21世紀は知識よりも考えることが重要になると言われて久しい。しかし、「考える」とはなにかを明確に言うことは、意外に難しいのではないか。

本書では身近の事例(例えばプロ野球から自殺者数など)を元に、データから気づきを得るまでの思考プロセスを明かす。ブログ程おちゃらけてはいないが、わかりやすいシンプルな書きっぷりは健在。本書はただ読むだけでなく、読み終わったらぜひ身近の例を使って同様に自分の頭で考えてみたい。

P.S.本書とは少し関係ないが、かなり先と言われていたコンピュータが人間に将棋で勝つことが起きた。コンピュータの性能向上と共に、莫大なパターンをシミュレーションできるようになったのが大きいだろう。とすると、人間の考えることも大部分がいずれコンピュータに置き換わるのではないか。何が、人間に残るのだろうか。。。
来年4月に開校を目指す3大学の設置不認可を発表した田中文科相に対し、3大学を始め猛反発によって撤回、さらに謝罪するに至った。この件で非常に気になったのは、うわべだけで本質を考察した記事を見ていないので、ここに記載してみる。

田中文科相:「設置不認可」 翻意へ委員会で与野党包囲網
毎日新聞 2012年11月10日 15時00分(最終更新 11月10日 15時02分)
 田中真紀子文部科学相が秋田公立美術大(秋田市)など3大学を「設置不認可」とした問題は、田中文科相が発言を二転三転させたあげく「認可」に言及、9日にやっと謝罪して決着した。

発端は、

クローズアップ2012:文科相、3大学再審査へ 猛反発で一転「決断」 「問題提起」手法に疑義
毎日新聞 2012年11月07日 東京朝刊
 田中文科相の「問題提起」は、大学数の多さや審議会の在り方だ。この日の記者会見でも「乱立に歯止めをかける」と述べた。「方法に問題はあるが、問題提起は正しい」という声もある。
 規制緩和の流れを受け、03年度から文科省が大学新設の抑制方針を撤廃したこともあり、大学数は増加。00年に649校だった4年制大学は12年で2割(134校)増の783校となった。同省は今年度から財務情報や学生の就職情報を公開していない大学・短大への助成金を減額しており、定員割れなど経営難に陥っている大学の統廃合を促している。

にもある通り、大学の増えすぎと共に質の低下に対する問題提起だったのだろう。確かに、関係者が検討、合議してきた内容を就任したばかりの大臣が撤回するのは横暴、突発に思える。しかしながら、これは冷静に考えれば、大臣は職務である決裁を遂行しただけであり、これが騒動になるということがそもそもおかしい。開校前年の11月に大臣許可というスケジュールも、そもそも不許可を想定しないわけで、大臣はハンコを押すことしか期待されていない(余計なことはしてくれるな)という暗黙のルールが垣間見える。これは民主党が主張していた脱・官僚政治が進んでいないことを露見させたわけだ。

そもそも、数年の任期の大臣が、その道のプロである官僚とまともに戦えるはずもない。官僚支配を脱却するには、人事権を大臣が持つとともに、官僚と少なくとも互角に議論できるだけのスタッフ、体制としてシンクタンクがもっと必要と感じる。(※)

※例えばアメリカでは、政策に民間のコンサル会社が深く関わっている。
http://careers.accenture.com/us-en/about/news/Pages/military-veterans.aspx
放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ
ユーリ・バンダジェフスキー

合同出版 2011-12-13
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チェルノブイリ時代は得体の知れぬ恐怖心の方が大きかった放射能(一説には、冷戦時代の核武装の正当性のための情報操作とも)。フクシマ以降はLNT仮説の反証がMIT(マサチューセッツ工科大学)で発表されたり、徐々にその危険性が科学的に解明されつつある。即ち、低線量・長期被爆・内部被爆の確率的影響は数値比較することで他の危険因子(健康不足、喫煙、飲酒、etc.)ほどではないこと、また放射能事故の実害は避難やデマ・差別、不安と言った心理的ストレスの方が大きい。

本書はゴメリ医科大学の学長だった著者が、放射線被曝の研究成果として、未だ実害が認められていないセシウム137の危険性を述べる。別件で逮捕・禁固刑を受けたりと、いかにも口封じ的な背景も気になり手に取るが・・・

結論から言うと、タイトルにもある”放射性セシウムが人体に与える描く的生物学的影響”の実証に至っていない、と感じる。その理由として、まずはデータの示し方がある。構成は大別して、動物実験や実態調査によるセシウム取り込み経路や濃度の実態、セシウムが引き起こす症例、そして長期的な影響、(+防護方法)となるのだが、総じて、提示するグラフの殆どにおいて、母数や範囲の提示が無いので納得性がない。次に、検討範囲というか、反証をしていない。特に後半の長期的影響にあるのだが、ヨーロッパ諸国のガンの推移を示すところなど、セシウムの濃度との関係を示しておらず、またその他の因子を考慮していないので必要十分条件となっていない。最後に、論理構造が弱い。文章で示す内容としての根拠がないところが多い。例えば、P.47で文はゴメリ州のガン増加を述べているが、データ(グラフ)ではヨーロッパにおけるガンの死亡率として旧ソ連のデータを示したり、最終的な結論では今まで述べていない数世代への影響を訴えるなど論理の飛躍が見られたりする。即ち、本書はタイトルの内容を訴えることが大前提であり、根拠は後付けという印象を持たざるを得なかった。

P.S.本書は後半に、まるっきり同じ内容で英文バージョンも掲載している。そういう意味では、とても勉強になる。
世界の放射線被曝地調査 (ブルーバックス)世界の放射線被曝地調査 (ブルーバックス)
高田 純

講談社 2002-01-18
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ビキニ環礁のマーシャル諸島やチェルノブイリ、東海村臨界事故(c.f. 「朽ちていった命」)から、カヤーク・プルトニウム製造企業体での核災害、カザフスタン共和国の核実験場付近、シベリアにおける核爆発産業利用など、文字通り世界を飛び回り放射能汚染の実態を計測する。
構成としては最初に放射線とは何か、解説があり、中盤大部分を現地レポートが占め、最後に核災害の防御で終わる。放射線の説明では、内部に取り込んだ放射性物質が半減する生物半減期とう概念も説明されている(例えば、物理半減期のCs-137:セシウム137は生物半減期100日)いる。また、放射能防御では、ヨウ素剤の代わりにルゴールやヨードチンキ、昆布の方法なども掲載。

科学者らしく、いたずらに放射線を怖がるわけではなく(旧ソ連では放射能汚染されたキノコによるディナーがおいしいなていうブラックジョークも)、粛々淡々と分析してあり、放射能汚染の理解が深まる。


福島の事故後、放射能の話題に事欠かないが、だからこそ、それ以前の科学的な知見は非常に参考になる。例えば生物半減期はTVなど一般のメディアでは見たことがないし(遥かに長い物理半減期のみ出して、いたずらに恐怖心を煽っている?)、甲状腺の防御に至ってはルゴールやヨードチンキは控えるよう、昆布を食べても効果が少ないと、放射能障害とのデメリット比較という判断軸がないままアナウンスされたのは記憶に新しい。
不必要に放射能を恐れさせる結果(E.g.東日本大震災:原発事故後に精神科入院、被ばく恐怖「影響」24% 福島県立医大、県内の患者調査 (出典:朝日新聞))もあり、単に放射線の害だけではなく、メリットや過剰な反応によるメリットなど、多面的に物事は考慮したい。脱・原発問題から、話は脱線するが消費税・増税問題など、Yes/Noだけの1元的な問いはそもそも問題ではなく、思考停止を招くだけである。